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■ 仕事のポイント ものづくりの基本は努力と「なぜ?」 | ![]() |
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「鉄腕アトム」は、人間の感情を持ち、悪と闘うロボットの少年でした。 その昔、ギリシア神話の中では、黄金の少女ロボットを作った話があります。 ロボットは、人間の長い間の夢であり続けています。 そして、科学技術が飛躍的に進歩した現代、ロボットの研究は大きく進みました。 工場の部品を生産したり、組み立てたり、さらに、ロボットによる手術や介護ロボットなども登場しています。エンジニアの吉川さんは、子どもたちに人気の自転車ロボットの開発者のひとりです。 自転車ロボットとは、エンジニアとは、吉川さんに話をお聞きしました。 |
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■ エンジニアって、どんな仕事? エンジニアとは、ものをつくる技術者であり技師。主な仕事は、社会が必要とする製品や設備を開発し、それらが正常に利用できるよう維持管理をすることです。自動車・電機・電子・医療・通信・電力・水道をはじめとする様々な分野に専門のエンジニアがいて、私たちの暮らしを支えています。 |
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■ 話を聞いた人![]() 吉川浩一(よしかわ・こういち) 1963年、福井県福井市生まれ。 趣味はガーデニングやバイクいじり。「家にある家電が故障しても、少々のことなら自分で直してしまいます」。 |
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●エンジニアを志したきっかけはなんですか?
子どものころから数学と理科が好きでした。特に数学は、どのように解いても答えはひとつ、という点が好きでしたね。世の中にないものを創造する仕事につきたいと思って、中学卒業後に、福井工業高等専門学校の電気工学科に入学しました。17歳のときの実習の授業で、ポケットコンピューターを使って簡単な計算のできるソフトウェア、つまりコンピューターのプログラムを作ったのですが、人間がやると時間がかかる計算も、計算ソフトであっという間に答えが出たんです。ソフトってすごい、面白いと思い、関連の本を読みあさりました。
●入社当時の思い出は?
いったんソフトウェアの会社に就職し、ソフト技術者の専門的な仕事を経験した後、今の会社に再就職したのですが、ソフト作りの大変さを周囲が理解してくれないのはつらかったですね。
工芸品なら誰でもそのすごさがわかりますが、ソフトウェアというのはコンピューター内部のプログラミングの世界。人間なら簡単にできてしまうことでも、色々な条件を想定してすべてをプログラミングしなければなりません。それを「このくらい、すぐできるだろう」などと言われたときは悔しかったです。部署には私一人で、相談できる人もいませんでしたから。
●そんな状況で、やる気はどこから湧いてきたのですか?
私は高専卒で大学へは行っていないので、ひとつは大卒の人に負けたくないというハングリー精神です。言い訳するのがいやだったので、成果で見せるしかないと思いました。
大きな成果は、工場で起きている問題をその場ですぐにわかるソフトを開発したことです。工場の生産効率が良くなって、他の工場から見学が来るようになり、社長にもほめていただきました。
もうひとつはソフト作りが好きだったから。コンピューターは変化が激しいので、常に新しい知識を習得し、新技術を製品化する企画力などが求められます。熱中しだすと時間を忘れて没頭しました。
●自転車ロボットはどんなロボットなのですか?
幅2センチの平均台、25度の急な坂道を、自転車で倒れず走ることができるロボットです。障害物までの距離を正確に測定し、ぶつかる前に停止する機能もあるんです。身長約50センチ、体重約5キロ。テレビニュースや新聞で取りあげられ、当社のCMにも登場しました。子どもたちにとても人気があり、科学に興味をもってもらうきっかけにもなりました。
●どの部分を担当されたのですか?
私が担当したのは、ロボットの背中のリュックに入るマイクロコンピューターのソフトです。開発は、試す→失敗→また試す、の繰り返し。子どもが自転車の練習をするのと同じですね。理論上、倒れずにカーブを曲がることができるはずなのに、実際は失敗する。見えないところに理由があるんですよ。例えば、100の力を車輪に送っているのに、96しか伝わっていなくて残りはロスとして熱になっていた、とかですね。これはもう、動かしてみないとわからない。センサーの取り付け位置を変えてみたり、部品をサンドペーパーで磨き直したり、手探りで調整していきました。
●安定して走り出したときは、どんな気持ちでしたか?
それはもう、感動でした。発表会では、わが子を見守る親のようにハラハラしましたが、無事に走行に成功。誇らしかったですね。何度失敗してもあきらめずにがんばったから、できたんだと思います。なんでもそうですが、ソフトウェアの開発は細かい部分まで高い完成度が求められます。忍耐力と柔軟性、チャレンジする勇気が必要です。
●中学時代こそやっておきたいことを、何かアドバイスお願いします。
何回失敗しても、次はうまくいくかもしれない、目標を設定したら簡単にあきらめず、努力を怠らない。そういう期待と信念を持ってください。
そして、技術者のひとりとして「周囲にある便利な環境を簡単に見過ごさない」ことも重要です。なぜ携帯電話で遠くの人と話せるのか。なぜ蛇口をひねると水が出るのか。それは、それらが当たり前になるよう努力しているエンジニアがいるからです。その技術に思いをはせると、科学への興味がわいてくる。そしてきっと、働く人への感謝の気持ちにもつながっていくと思うんです。