エネルギー環境教育の重要性と進め方

 

 

 

◆エネルギー環境教育の重要性

 21世紀は「環境」の時代であると言われる。環境問題の解決に向けて全世界が全力を傾けなければならない時代である。そして、「環境」に対するさまざまな対策や戦略が国際社会を動かす重要な鍵となる。それ以上に、人類の生存自体にかかわってきているのでる。したがって、教育において、この「環境」の課題にさらに真剣に取り組まなければならならないのは当然のことである。環境教育のさらなる充実・発展が不可欠である。

 

 環境教育を通して、特に力を入れて取り組まなければならないことは、「自然の問題」「エネルギーの問題」「廃棄物の問題」の三つであると考える。「自然の問題」では、自然とのかかわり方を文化のあり方としてとらえていくことが必要である。また、「エネルギーの問題」や「廃棄物の問題」では、持続可能性の確保や循環型社会の構築といった視点がそれぞれ必要である。どちらの場合も社会の仕組みやシステムの問題としてとらえていくことが求められる。そして、こうしたとらえ方を通して、「循環」「抑制」「共生」といった価値を合意し、共有していくことが必要である。

 

 ところで、これまでの日本の環境教育のあり方を見ると、「自然」や「廃棄物」の問題には取り組んで来ているが、「エネルギー」の問題にはあまり取り組んでこなかったということが指摘できる。「エネルギー」の問題は、1973年の第一次オイルショックをはじめとして、これまでに絶えずその重要性が注目されてきたのにかかわらず、日本の環境教育はそれに対応できずに来てしまったのである。1990年代になってからは、地球温暖化への危惧や「持続可能な発展」への取り組み等、これらと密接にかかわる「エネルギー」の問題への取り組みが重要度を増してきている。そして、ようやく最近になって、エネルギー環境教育の重要性と必要性が見直され、実践も緒に着き始めたところである。さらなる充実・発展が求められているといえよう。

 

 エネルギー環境教育は、「エネルギー+環境」教育といった環境教育の拡大解釈ではなく、「エネルギー」を軸教材とする環境教育としてとらえることが必要である。「エネルギー」に関する内容を中心とする環境教育と言い換えてもよい。そして、「総合的な学習の時間」を中心としつつ、社会科、理科、技術・家庭科等の教科・領域においても基礎的あるいは発展的に取り組んでいくことが求められる。

 

 

 

 

◆エネルギー環境教育の進め方

 エネルギー環境教育を進めるにあたっては、まず、環境教育のねらいをしっかり踏まえることである。環境教育のねらいは、三つの視点から捉えると分かりやすい。例えば、平成8年7月の中央教育審議会第一次答申では、環境教育のねらいを次のように述べている。

 

○環境から学ぶ−豊かな自然や身近な地域社会での様々な体験を通して、自然に対する豊かな感受性や環境に対する関心を培う

○環境について学ぶ−環境問題と社会経済システムの在り方や生活様式のかかわりについて理解を深める

○環境のために学ぶ−環境保全や環境の創造を具体的に実践する態度を身につける

 

 しかし、こうした三つの視点はそれぞれがばらばらにあるのではなく、それぞれの視点が統合されたところに、環境教育は成立するということに注意しなければならない。「環境から学ぶ」の視点は「学び方」の形成にかかわり、「環境について学ぶ」の視点は「認識」の形成にかかわる。そして、「環境のために学ぶ」は「人間形成」そのものである。しがった、三つの視点の統合こそは、現在の教育課程が求める「確かな学力」の形成であり、環境教育の本質でもあるのである。

 

 次に、こうした環境教育のねらいにもとづき、「エネルギー」を軸とする教材とカリキュラムの開発が必要になる。この教材開発及びカリキュラム開発においては、次のような視点が重要である。

 

@体験や具体的な活動を重視しながら生活に密着した形の問題解決型学習を行うこと −エネルギーに対する課題意識を高めるためには、体験や具体的な活動を通して、その課題を身近なものにするとともに、具体的に考えられるようにすることが必要である。

Aエネルギーを資源・生産・流通・消費・廃棄・処理といった社会システムの観点から多角的・総合的にとらえられるようにすること − エネルギーの問題を現実の社会の中に位置づけて、社会システムのあり方として考える必要がある。単に、省エネルギーや節電の必要性で終わってしまうのでは不十分である。

B発達段階に即したエネルギー環境教育の系統性・発展性を重視し、確実な概念形成が図れるようにすること − エネルギーの選択は国民全体が決定するものであるという観点にたち、その選択に際して必要不可欠な認識を培うことが必要である。

Cエネルギー利用に対して子ども自身が適切に価値判断できるようにすること − そのためには、多様な観点や立場から多角的に考えられるようにすることが必要である。また、原子力発電に関しても具体的にふれる必要がある。

D日常生活における実践行動に結びつくようにすること − そのためには、自分自身の生活や行動をたえず振り返るようにするとともに実践活動に積極的に取り組んでいる人々の生き方にふれることが大切である。

 

 これらの視点を環境教育の三つの視点に対応させると、@は「環境から学ぶ」、AとBが「環境について学ぶ」、そしてCとDが「環境のために学ぶ」ということになる。こうした教材開発およびカリキュラム開発に基づいた実践が、今後のエネルギー環境教育の充実・発展において、必要不可欠と考える。               

 

(山下宏文)