教材の特長と使い方

 

 

 

◆教材の特長

 本書は、小学校、中学校、高等学校を貫くエネルギー環境教育のカリキュラム開発の研究に基づいて作成された学習用教材集である。学習用教材は、小学校低学年用、中学年用、高学年用(以上、小学校編)、中学校用、高等学校用(以上、中学・高等学校編)の五つからなっている。そして、それぞれの教材において、教材の意図、児童・生徒用読本、ワークシート、さらに指導の手引きが用意してある。これらを利用すれば、すぐにでもエネルギー環境教育の実践ができるようになっているのである。

 本書に用意された教材は、先に掲げたエネルギー環境教育の教材開発及びカリキュラム開発の視点をふまえるとともに、次のような点を重視して作成してある。

 

@ エネルギー環境教育を系統的・発展的に積み重ねられるようにすること

  本教材は、小学校から高等学校までの12年間を見通したカリキュラムに基づき、エネルギー環境教育を発達段階に応じて系統的・発展的に展開できるように配慮してある。小学校低学年で体験を通してエネルギーを感じることから出発し、中学年では身近な生活の中でエネルギー問題に関心をもち、高学年では国土や産業との関連からエネルギー問題を考えられるようになっている。また、中学校ではエネルギー問題を歴史的視野、世界的視野からとらえられるようにし、高等学校では21世紀の社会像としての循環型社会づくりのための政策や生活の見直しを行うようになっている。

 

A 「認識形成」「学び方形成」「人間形成」を統合的に図るようにすること

 環境教育における三つの視点である「環境について学ぶ」「環境から学ぶ」「環境のために学ぶ」は、環境問題を解決いくための確かな認識を形成する「認識形成」、自ら学ぶ力を形成する「学び方形成」、さらに、豊かな人間性やよりよい環境を創造していくための能力や資質を形成する「人間形成」に置き換えることができる。本教材では、これらの統合的育成を図るべく、ねらいを「認識形成」「学び方形成」「人間形成」のそれぞれに対応させて設定してある。

 

B 発達段階に応じた「学び方」の工夫をすること

 学習においては、問題をつかむ、予想する、調べる、話し合う、表現する、発展するといった一連の探求型学習を重視し、その中で児童・生徒が自ら「学び方」を獲得していくことが求められる。特に、「調べる」活動では、体験、観察、測定、調査、実験等の具体的活動が重視されねばならない。本教材は、こうした探求型学習を基本としつつも、子どもの発達段階に応じて、体験型学習、参加型学習、問題解決型学習等を組み込んで構成してある。つまり、小学校の低学年は体験型学習を中心とし、それ以降は探求型学習を基本としながら行動型学習や問題解決型学習にも取り組み、高等学校では問題解決型学習の要素を強めるといった構成になっている。

 

C 子ども自らが価値判断していくための「認識形成」

 確かな「認識形成」を図るためには、環境をしっかりとらえる視点が必要である。本教材では、環境をとらえる視点として「存在」「有用」「有限」「有害」「保全」の五つを設定し、これらの視点からエネルギーを総合的にかつ適切に認識できるように配慮してある。こうした認識に基づき、「循環」「抑制」「共生」といった価値観の合意・共有を図りたい。

 

 

 

教材の使い方

 本書は、「総合的な学習の時間」におけるエネルギー環境教育の小学校低学年学習用教材、中学年学習用教材、高学年学習用教材、そして参考実践例で構成されている。それぞれの学習用教材には、教材の意図、児童用読本、指導の手引き、ワークシートが用意されている。総合的学習においては、子どもの興味・関心を喚起し、学習への動機づけを明確にしながら、追求の方法手順をも予測的に検討することで学習に見通しをもち、主体的に課題解決をしていくことが求められている。これは目標、方法、内容の明確化と言い換えることができるが、それは学習者にもきちんと把握されてはじめて成り立つことである。本教材は、こうした総合的学習の特性にきちんと対応できるよう配慮して作成されている。

 

 

 

◆学習用教材

教材の意図 

 主題、ねらい、特長、カリキュラム全体の中での位置付け、学習計画を提示してある。 学習は、学習テーマに対応した学習を積み重ねていく形で進めるようになっている。この後に用意してある読本、指導の手引き、ワークシートも学習テーマごとにセットになっている。

 最初の学習テーマ(0が付けられいるもの)は、学習への導入段階(オリエンテーション)を意味しており、ここでは、学習に対する興味・関心の喚起や動機付け、さらに課題意識の明確化を図り、子どもの主体的学習が実現できるよう意図している。子どもが学習への切実性や必要性をもち、学習の方向付けを自覚するためには、1時間で終わる場合もあるが、なかには数時間を要する場合もあるだろう。それぞれの学年における個々の子どもの学習レディネスを把握しながら、学習の見通しをもたせていくのが「0次(時)」の位置付けである。

 その後、順番にしたがって学習を進めて行くようになっているが、順番を入れ替えたり、一部分を省略したりして学習することも可能である。また、部分を取り出して、教科・領域の学習の中に位置づけていくこともできる。

 

読本

 コピー印刷して児童に配布し、テキストとして利用できるようになっている。学習テーマごとにその都度配布したり、すべてをまとめて印刷し冊子の形で配布したり、利用形態はいろいろ工夫できる。また、拡大コピーや投影機を利用して提示用としても活用できる。オリエンテーションのページには、「もくじ」を示し、その後の学習の見通しをもてるようになっている。

 

指導の手引き

 学習テーマごとに指導の手引きを用意してある。学習のねらいや展開の仕方、指導上の留意点などを示してある。さらに、補充資料や参考文献、参考となるウェブサイトなども紹介してある。また、児童用読本に掲載してある写真や図表などを鮮明に確認できるウェブサイトも示してある。

 

ワークシート

 学習テーマごとに児童用ワークシートを用意してある。読本と対応させてあるので、児童が自ら学習を進めていくこともできる。そのままコピー印刷して使用できるが、場合によってはA4版に拡大して使用するのもよい。また、必要な形に作成し直しても構わない。ワークシートの利用は、児童の変容の分析や学習の評価に関して有効である。

 

 

 

参考実践例

 本書に示した教材に基づくエネルギー環境教育の実践については、本シリーズの『エネルギー環境教育の理論と実践』において詳しく紹介してある。本書にある実践例は、これまでに実践されたもので、今後、エネルギー環境教育を進めていくうえで参考となるであろうと思われるものである。これらの実践にも学びながら、本書の教材を有効に活用し、エネルギー環境教育に取り組んでもらいたいという意図である。

 

 

 

本書をよりよく活用するための参考文献

佐島群巳・堀内一男・山下宏文編『学校の中での環境教育』国土社、1992

佐島群巳『環境教育入門−総合的学習に生かす』国土社、1999

佐島群巳・高山博之・山下宏文編『「資源・エネルギー・環境」学習の基礎・基本』国土社、2000

結城光夫・伊原浩昭編『子どものための環境学習』ぎょうせい、2001

佐島群巳『環境教育の基礎・基本』国土社、2002

山下宏文「総合的学習とエネルギー環境教育の課題」「これからの「総合的な学習の時間の在り方」(広領域教育、No.50No.54、広領域教育研究会)、2002.112004.3