ビデオ講座
ニワトリ卵に窓を開け、卵内で発生する胚の様子を「連続して」観察するシステムを開発しました。
ニワトリの胚は卵の中で育ちます。外側からは卵殻があり、胚が発生していく様子を直接見ることができません。
卵殻に穴をあけた後、乾燥しないようにラップで被い、卵内の発生の様子を観察する方法があります(ウインドウ法)。
加えて、このシステムでは、顕微鏡下で同じ胚を連続して撮影しています。
孵卵時間の経過に伴い、胚がだんだん大きく、複雑な形になっていく様子を見ることができます。
そのまま見てもいいのですが、ビデオの進行を示すカーソルをクリックし、右に進めると発生の様子を早送りできます。
逆に、左に戻すと発生を戻すことができます。
以下をクリックして下さい。ビデオが始まります。
ビデオ1(孵卵3日胚からの連続撮影。200倍速で録画したもの。25分))
ビデオ2(孵卵3日胚からの連続撮影。8時間毎に5分間録画したもの。7分)
ニワトリ胚発生について
鳥類、爬虫類、哺乳類は有羊膜類と呼ばれ、胚が羊膜という膜に囲まれている点に大きな特徴がある。
羊膜の存在は脊椎動物の進化の上で重要な意味をもつ。
両生類が陸上へと進出したときも、受精、初期卵割という一連の生殖過程に水環境を必要とするために、
成体は生殖時期には水辺へ戻る必要があった。爬虫類は卵を卵殻で守り、胚を羊膜でつつみ、
中を羊水で満たし乾燥から守る方法を確立し、完全に陸上生活へと適応した。
陸上生活への適応を考えるとき、呼吸様式の変更、乾燥への対策、排出系の発達など親世代の
陸上生活への適応もさることながら、最後まで問題として残った、母体内受精を始め、
卵殻、胚膜の形成など生殖過程の変更を確立しなくてはならなかったことは、
生殖細胞の意義、世代交代における生殖過程の意義を考え合わせると非常に興味深い。
また同じ有羊膜類に属する哺乳類の体内発生も、初期卵割期の変更を別にすると、
爬虫類の胚膜形成を踏襲している。ヒト、ウサギの発生初期では鳥類・爬虫類と同じような胚盤を形成する。
このように、鳥類の発生は脊椎動物の陸上進出への対応を学ぶ上で、また哺乳類の発生を理解する上でも意義深いと考える。
ニワトリ卵は卵巣から排卵後、体内で受精し、初期卵割(盤割)を行いながら輸卵管、子宮を下る。
そのとき卵白、卵殻を周囲につける。産卵されたときは既に、
上下2層の細胞層からなる胚盤葉(両生類の胞胚期−初期嚢胚期に相当する)にまで発生している。
その後発生を停止するが、孵卵すると発生を再開する。ニワトリ胚は発生が比較的早く、胚の成長とともに、
各器官が形成されていく様子を肉眼で観察でき興味深い。特に、心臓の拍動や血管・血液の分化、体節、
脳胞や目の発生などは観察しやすい。
(岩本と梶原、生物教育41巻、2-8頁より抜粋)
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