2.葉の腐食程度と摂食量
[実験の目的]
同一種の葉であっても、腐食程度が異なると摂食量が異なるか否かを確かめる。(本実験を行うには、新しく落下した枯葉をあらかじめ用意する必要がある。)
[解説]
ここではダンゴムシが好みかつほとんどの学校で見かけることができるサクラの枯葉を用いる。同じ枯葉であっても、落葉直後のものから、地面に落ちてから時間がたった腐食した枯葉まで様々なものが存在する。ダンゴムシはどのような枯葉をより好むのかを調べる。
春以降の時期にサクラの腐食葉を得ることは困難である。サクラの枯葉は分解を受けやすく、ボロボロになっているためである。そこで、あらかじめ「新鮮な」落葉を採取しておく。その落葉を地面に一定期間放置し、雨に打たせ、微生物の作用を受けさせる。その際、腐食葉がダンゴムシ・ワラジムシ・トビムシなどに食べられないよう、微生物は侵入できるが小動物は侵入できないほどの目をもつ布に包んでおく。
枯葉の主成分はセルロースであるが、ダンゴムシそのものは強固な化合物であるセルロースを分解・吸収することはできない。セルロース分解酵素をもつ微生物の手助けをうける必要がある。ダンゴムシの体内にも共生微生物がおそらく存在しているだろうが、あらかじめ微生物により分解されかかった腐食葉を摂食する方が消化効率がよいだろう。
[準備物]
・ダンゴムシ(各容器につき10匹程度) ・サクラの枯葉(前年の晩秋に落葉したもの)
・薄手の布(たとえばナイロンゴース) ・ホッチキス ・ハサミ ・ポリエチレン板
・複数個の飼育容器 ・消毒した砂
・デジタルカメラ
[方法]
(1)前年の晩秋から初冬にかけ採取し室内保管したサクラの枯葉を複数枚用意し、それらを薄手の布でくるむ。枯葉を食べる虫たちが入らないように隙間をなくし、ホッチキスでとめる。
(2)枯葉の入った上記の袋を、野外の地面に置き、風で飛ばないように小石をのせておく。このようにして枯葉を雨や微生物(細菌やカビ・菌類)に一定期間さらす。
(3)野外に枯葉を置いてから一定期間後(たとえば1ヶ月後)、袋からサクラの腐食葉を取り出し、水に1時間ほど漬ける。別に比較対照のため、室内保管したサクラの枯葉も同じく水に漬けておく。
(4)実験1(葉の好みを調べる実験)と同様、腐食葉と室内保管した枯葉から25mm四方の葉を切り出し、砂を入れた容器にそれぞれ1枚ずつ置き、ダンゴムシをおのおの10匹程度入れる。
(5)1日後、残った葉の様子から摂食量の違いを読み取る。結果をデジタルカメラで撮影しておく。
[結果の一例]
1週間放置した程度では、室内保管の枯葉も野外放置の腐食葉ともほとんど差がなく、1日間の摂食期間ではどちらもあまり食わなかった。1ヶ月放置の場合も1日間の摂食期間では差があまりなかったが、2日間食わせると顕著に腐食葉を摂食することが明らかであった(写真左)。3か月放置の腐食葉では摂食速度がたいへん速く、1日間で食べつくした(写真右)。
どちらの場合も室内保管枯葉、放置腐食葉とも2ケースずつ用意したが、同じような結果が得られた。
1ケ月放置した枯葉(上段)と室内保管の枯葉(下段) 3ケ月放置した枯葉(上段)と室内保管の枯葉(下段)
2日間摂食させた結果 摂食開始1日後の結果。
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