4.「ダンゴムシが植物の成長に役立っていること」を確かめる実験
[実験目的]

 ダンゴムシが排出した糞や食べ残しが植物の成長に役立っていることを確かめる。

[解説]

 植物が成長するためには、光合成のために必要な水と光だけでなく、根から吸い上げる養分(無機物)も必要である。ダンゴムシが排出した糞中にはバクテリアが大量に含まれると考えられ、またそれらの糞や食べ残しの枯葉粉砕物の表面にバクテリアがとりつき、有機物を消費・分解する。すなわちダンゴムシは摂食活動を通して分解者の活動を促進する役目を果たしている。
 ダンゴムシの糞や食べ残しが植物に有効な養分となっていることを見るため、ここではウキクサをモデル生物とし、対照区との違いを定量的に比較する実験を開発した。

[実験方法]

(1)ダンゴムシを採集し、実験開始前まで2日間絶食させ、消化管内容物を排出させる。

(2)枯葉を1日間水に漬け、水分を十分含ませておく。

(3)ほぼ同量の砂を各容器に入れ、ダンゴムシ20匹と枯葉1枚を入れた容器(「ダンゴムシ区」と呼ぶ)、枯葉1枚だけ入れた容器(「枯葉区」と呼ぶ)、どちらも入れない砂だけの容器(「対照区」と呼ぶ)を1セットとして準備する。

(4)上記の容器を2週間精置し、ダンゴムシに枯葉を食わせる。

(5)2週間摂食させた容器からダンゴムシをピンセットで除去する。容器の底には、ダンゴムシの糞や食べ残した枯葉が残っているだろう。

(6)ダンゴムシの除去後、各容器に貯め置きの水道水を150mlずつ加える。それぞれの容器にウキクサの葉状体を1枚ずつ入れ、窓際の明るい場所に置く。日当たりの条件をできるだけ均等に保つため、ときどき容器の位置を入れ替える。

(7)各容器に浮かんだウキクサ葉状体の数を一定間隔で記録する。またそのとき、蒸発して少なくなった水を補うため、適宜水を補給する。

(8)ウキクサの増殖量に十分差が出た時点で実験を終える。
 

[準備物]
 
 以下は容器3個を1セットとした場合である。できれば複数セットを用意した方がよい。

 ・ダンゴムシ(各容器に20匹程度)   ・広葉樹の枯葉(サクラ、ケヤキ、アオギリなどの薄手の葉)
 ・石英砂(または加熱で消毒した砂)  ・円筒容器(3個、直径10cm、深さ5cm程度)
 ・ウキクサ(葉状体を3枚)

[結果の一例]

 京都市伏見区ある京都教育大学で2008年6月13日にウキクサを培養し始め、7週間観察を続けた結果を以下に紹介する。枯葉としてケヤキを用いた。


実験開始時のウキクサの葉状体。ウキクサでは葉と根が一体化しているため葉状体と呼ばれる。分化し始めた葉の長さが元の葉の半分を超えたとき、「1枚」増加とみなした。

実験開始後7週間たった時点での
「ダンゴムシ区」(上段)・「枯葉区」(中段)
「対照区」(下段)におけるウキクサの増殖の
様子。ダンゴムシの糞と食べ残しがある

            
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