ピロリ菌に高い進化能力…日米欧の研究チームが発見

 胃潰瘍(かいよう)の原因とされるヘリコバクター・ピロリ菌は、感染する人の血液型に合わせ、巧みに姿形を変えて胃粘膜に住みつく順応性があることを、日本、米国、欧州の国際研究チームが突き止めた。  全世界人口の半数以上が感染しているとされるピロリ菌の高い進化能力が確認されたのは初めて。成果は米科学誌「サイエンス」最新号に掲載された。  胃の粘膜細胞は、血液型によってタイプの異なる糖鎖に覆われている。ピロリ菌は、表面からたんぱく質の“手”を伸ばしてこの糖鎖と結合し、胃に住みつくとされる。  研究グループは、世界各地の胃潰瘍患者から採取したピロリ菌と血液型の関係を調べた。  O型の人が非常に多いペルーなど南米で採ったピロリ菌の60%以上は、O型の人だけと結合する「特定型」のたんぱく質だった。一方、日本や欧州の人から採取されたピロリ菌の95%は、どの血液型の糖鎖でも結合する「万能型」のたんぱく質を備えていた。  研究グループは、ピロリ菌は、血液型によって異なる糖鎖を認識し、結合たんぱく質を変化させ、感染を拡大させたとみている。 (2004/7/26/03:17 読売新聞)  (雑談 ピロリ菌退治 毎日新聞)
意外なところに血液型が出てきました。
日本人には O 型、 A 型、 B 型、AB 型がそれぞれどの程度の割合でいるのか、それは
30.5% 38.2% 21.9% 9.4% ABO STUDY調査
29.2% 38.7% 22.2% 9.9% 日本人の血液型の分布について (2001/3/10) 調査
調査するごとに微妙に数値が異なるのですが、大体の値は一致しています。


ABO 遺伝子の
組み合わせとして

O 型  OO
A 型  AA, OA, AO
B 型  BB, OB, BO
AB 型  AB, BA

となっている。
参考1  参考2
ある集団において
O, A, B 因子の割合が
各々 o, a, b として
血液型が O, A, B, AB の人の割合が
各々 p, q, r, s とする。
集団が均一であり
O, A, B 因子は選り好みしない
この仮定のもとでは、次が成り立つ。

p = o2
q = a2 + 2oa
r = b2 + 2ob
s = 2ab
γ = root(p)
α = root(p+q) - root(p);
β = root(p+r) - root(p);

とおくと、仮定がまったく正しければ
o = γ, a = α, b = β となり

α + β + γ = 1
s = 2αβ


となる。

|α + β + γ - 1|, |2αβ - s| の値が
小さければ小さいほど
仮定の正しさの割合が
より高いと思える。(単なる感想)

血液型の隠された法則(授業例) 


日本 O 型 29.2%, A 型 38.7%, B 型 22.2%, AB 型 9.9% で計算した図
最初の4本のグラフは p = 0.292, q = 0.387, r = 0.222, s = 0.099 としたもの。 一目盛りは0.02 (2%)
次の3本は γ, α, β のグラフ。一目盛りは0.02 (2%)
最後の2本は α + β + γ - 1 と 2αβ - s のグラフ, 一目盛りは0.0002 (0.02%)。青は正、赤は負


オランダ、イギリス、ドイツの例
人類とピロリ長いつきあい 6万年、遺伝子分析で判明  胃かいようの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌は、現在の人類が東アフリカを出る時点で既にヒトに感染、人類が世界各地に進出するのと同時に広まったとの研究結果を米ベイラー医科大消化器内科の山岡吉生准教授ら国際研究チームがまとめ、英科学誌ネイチャーに8日、発表した。
 人類は数万年前から、ピロリ菌によるかいように苦しめられていたのではないかという。
 ピロリ菌の遺伝子は人種によって違っており、山岡准教授らは2001年以降、世界の51民族の計769人から菌を採取し調べた。
 菌の遺伝子には、特定の塩基配列が5種類あると判明。これは古くから保存された部分で、この部分の割合や遺伝子変異の違いから菌の広がり方、年代を推定した。その結果、菌は約5万8000年前に東アフリカから広がったと推定した。
産経新聞記事 2007/2/7
ピロリ菌にアレルギー性ぜんそく予防効果 筑波大グループ発表
2010.12.14 02:00
 乳児期にピロリ菌から抽出したコレステロールの一種を与えると、アレルギー性気管支ぜんそくや花粉症、食物アレルギーなどの予防に効果があると、筑波大大学院数理物質科学研究科の島村道夫研究員らのグループが13日付の米国医学誌ジャーナルオブクリニカルインベスティゲーション電子版で発表した。
 気管支ぜんそくは排ガスなどの化学物質や花粉、ハウスダストなどにより引き起こされる。患者数は日本で約300万人、世界で約3億人と推定され、小児での羅患率が高い。これまで、ステロイドや気管支拡張薬の投与など対症療法が中心で根本的な治療は難しいとされていた。
 研究グループは胃などの消器官の疾患を引き起こすことが知られているピロリ菌からコレステロールの一種を抽出。生後2週間のマウスに投与し、成長後に気管支ぜんそくの発症を抑えられることを発見した。
 研究グループは「コレステロールの一種を投与すると、リンパ球の一種が優先的に活性化され、アレルギー抑制につながる」と説明。島村研究員は「今回の発見は同じメカニズムで発生する花粉症や食物アレルギーも有効。近い将来、効果的な予防薬の開発が期待される」と話している。(篠崎理)
東京新聞記事 2007/2/7

沖縄の深海から採取、
培養された微生物
=海洋研究開発機構提供
胃炎を起こすピロリ菌の祖先は、深海の微生物?
 胃炎を起こすピロリ菌の祖先は、深海にすむ微生物だった――。海洋研究開発機構の中川聡研究員が深海にすむ微生物のゲノムを解読し、こんな結果を得た。今週の米国科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。
 中川さんは有人潜水艇しんかい2000で、水深千メートルの熱水孔から微生物を300株採取。水素ガスや硫化水素の濃度など、深海の環境を再現して培養することにも成功し、2株のゲノムが256万塩基対と187万塩基対であることを解読した。さらに詳しく分析すると、この微生物は、ピロリ菌や食中毒を起こすカンピロバクターの祖先であり、遺伝子レベルでは近縁と分かった。
 この微生物に病原性はないが、感染を含む、他の生物との共生関係にかかわっている遺伝子群も共通していた。
 中川さんは「人間に身近な病原体と深海底の微生物が似ていたのは予想外。病原体や微生物が大型生物と共生するまで、どう進化してきたのかを探る大きな手がかりだ」と話している。
朝日新聞記事 2007/7/5

ピロリ菌タンパク質でがん 北大、マウス実験で確認
北海道大遺伝子病制御研究所の畠山昌則教授(分子腫瘍学)らの研究グループは8日、 胃がんの原因とされるヘリコバクター・ピロリ菌のつくり出すタンパク質CagAが、 生物の体内でがんを引き起こすことを、マウスを使った実験で確認した、と発表した。
 同教授らは、試験管レベルの実験では同様の結果を得ていたが、 動物実験で確かめたのは世界で初めてという。実験結果は米科学アカデミー紀要電子版に 掲載される。
 研究グループは今回、遺伝子操作により、全身の細胞でCagAをつくり出す 特殊なマウス約200匹を誕生させた。生後3カ月までに、 約100匹のマウスに胃壁が厚くなる病変が現れ、 うち2匹が胃がん、4匹が小腸がん、 17匹が白血病やリンパ腫といった血液がんを発病したという。(共同通信)
京都新聞

ピロリ感染者全員に除菌治療を推奨

日本ヘリコバクター学会は23日、胃がんの原因にもなる胃粘膜細菌ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の改訂診療指針を公表し、感染者すべてに抗菌剤による除菌治療を推奨するとした。
 除菌治療は、胃かいようと十二指腸かいようしか保険適用されておらず、同学会は厚生労働省に適用拡大を求めていく方針。
(2009年1月23日23時46分 読売新聞)

ピロリ菌侵入で異常増殖 抗体遺伝子改変のタンパク質

京都新聞記事 2009/12/7
 細菌やウイルスなどさまざまな外敵に対応するために、抗体を作る遺伝子を改変するタンパク質AIDが、がんを引き起こすピロリ菌などの感染で異常に増えるメカニズムを京都大医学研究科の本庶佑客員教授(分子生物学)、長岡仁准教授らが突き止めた。AIDとがんのかかわりの一端が示されたといい、英科学誌「ネイチャー・イミュノロジー」で7日発表した。
 ■京大教授ら解明、新たながん治療にも
 AIDは、通常は抗体を作るBリンパ球でのみ作られているが、胃がんの原因となるピロリ菌に感染した胃の粘膜細胞などでも増える。
 本庶客員教授らは、AIDを作る遺伝子の配列を解析したところ、AIDの産生を促進する「アクセル」の領域が二つあり、それぞれのアクセルはBリンパ球に特有の因子だけでなく、Bリンパ球以外にある因子によっても起動することが分かった。
 Bリンパ球以外にある因子は、ピロリ菌やC型肝炎ウイルスの侵入という細胞にとって極めて強い刺激を契機に働いていた。この因子がAIDを増やし、正常な遺伝子が改変されることで、がんが引き起こされるのではないかという。因子やAIDの働きを抑えることが、がんの新たな治療法となる可能性があるという。