「世界の・・」という大げさなタイトルを付けましたが、私自身が直接観察したことのある変わったアリジゴクを2種類だけ紹介します。
[前進歩行する巣穴形成型アリジゴク]
昆虫だから前に歩くことは当たり前ではないかと思うかもしれませんが、すでに述べたように、巣穴をつくるタイプのアリジゴクは前には歩けず、後ずさりしかできません。おそらく前進歩行という行動パターンを消失させたのでしょう。
しかし、「巣穴をつくるが前にも歩ける」というアリジゴクがいるのです!台湾北部(宜蘭県)の河原にすむMyrmeleon punctinervis というアリジゴクです。前進歩行を完全に退化させたのではなく、祖先的な形質を残した種であると推測されます。なぜそのような性質を残したのか、まだよくわかっておりません。
前進歩行性巣穴形成型アリジゴクのいる河原
前進歩行性アリジゴクの巣穴。普通の巣穴です。
[溝掘り型アリジゴク]
巣穴を掘るだけでなく、巣穴から四方八方に溝を掘る奇妙なトラップをつくるアリジゴクがオーストラリアにいます。
オーストラリアの東海岸に位置する大都市・ブリスベンから数百キロメートル内陸に入った所に、カナーボン渓谷という谷があります。砂岩性の切り立った絶壁の基部には半洞窟のような窪みが無数にあり、その半洞窟の床にその種は生息しています。
カナーボン渓谷 絶壁の下部
溝掘りアリジゴクの巣穴 高密度で見られる場所もある