ノリン
ノリンとは
ノリン nolinとは、インドネシア、バリ島(バリ州)、タバナン県ププアン郡プジュンガン村に伝承されている大正琴を起源とする楽器である。村の人々によると、この楽器は、1930年ごろ中国人によってプジュンガン村にもたらされたという。当初は個人が家で楽しむ楽器だったが、1961年には、ガムラン・ノリン gamelan nolinとよばれる編成が誕生した。この編成は、12台のノリンにバリのガムランに用いられるリズム楽器(太鼓やゴングなど)を加えた総勢約20名の大規模なものだった。従来は、青銅製のガムランで用いられる作品をプジュンガンの人々はガムラン・ノリンで代用して演奏した。1965年にいったんその伝承が途絶えたが、1980年代には復興されて現在に至っている。
写真資料について
撮影・解説:梅田英春
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ゲンジェ上演とその伴奏楽器として大正琴
ゲンジェgenjekは、古くからバリ東部で上演されていたササック語を用いる
チャクプンcakepungとよばれる芸能から1990年代前半に新たに誕生したバリ芸能です。
映像は、カランガッスム県の県庁所在地アムラプラ周辺の集落ジャスリの人々により1995年頃に結成されたグループ「ゲンジェ・ストレスGenjek Stress」によるゲンジェの上演です。
このグループは結成当初から、この地域で演奏されていた大正琴を起源とするプンティンとよばれる楽器を伴奏音楽として用いており、1996年にこのグ
ループがカセットテープを発売したことも影響して、バリのゲンジェの伴奏音楽としてプンティンが定着しました。
ただし、この映像で演奏しているのは、鈴木楽器が製作した大正琴です。ジャスリ村の男性が日本人の女性と結婚し、日本に出かけた際、「日本でバリのプンテ
ィンを見つけて、バリへの土産として購入した楽器」であり、彼らにとって日本の大正琴は、あくまでもバリの楽器であるプンティンなのです。
バリ東部の人々は、楽器をギターのように胸に抱えるようにして演奏します。
上演後、本来使用していたバリ製の大正琴と、映像の上演で使用した日本の大正琴を並べて写真撮影しました。
本来使用していたバリ製の大正琴と、映像の上演で使用した日本の大正琴 |
映像資料 (クリックすると再生します)
曲名は《Pengaksama》。最初に上演される曲。鈴木楽器製作所の大正琴を使用している。 | ||
《Mesuitra》 バリの民謡の旋律にもとづいた作品 | ||
《Nyai Nyoman》 バリの民謡の旋律にもとづいた作品 | ||
《Melajah Tutur》 バリの民謡の旋律にもとづいた作品 |
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《Pekaad》舞台の最後に上演される曲。 |
ガムラン・プンティンの練習風景
東部バリのカランガッスム県において、プンティンは1950年代から、バリのガムラン音楽の作品をアンサンブルで演奏するようになります。当時は多くのグルー プがあったといいますが、現在では二つのグループが活動を続けています。
この映像は、ムルドゥ・コマラ Merdu Komalaとよばれる若い人たちを中心に結成されてい るグループで、こうした編成をこの地域では、ガムラン・プンティンと呼びます。 このグループのプンティンは、芸術大学の美術学部を卒業したメンバーの一人がデザインし、自ら製作します。
映像のように、ギターのネックを模ったモダンなデザインの楽器が、このグループの楽器の特徴です。当初、弦の数は7弦でしたが、現在 は9弦 で、ギターの第二弦(6本)と第四弦(3本)が使われています。ペロッグ音 階、スレンドロ音階のどちらの作品も演奏し、葬儀などの際には、葬儀用のガムラン・ アンクルンの代用楽器として演奏されることもあることから、娯楽的な場だけでな く、儀礼においても演奏されています。