シタールの製作過程



シタールとは

インドの古典音楽には南北二つの様式に分けられるが、シタールは今日の北のヒンドゥスターニー様式における最も重要な弦楽器となっている。

名称は、三弦を意味するペルシャ語の「セタール」に由来するが、実際には直接演奏するための弦が7弦(うち旋律用3弦、ドローン用4弦)と十数本の共鳴弦を持つ。弦はすべて金属製。

床に座り楽器を斜めに構えて、左手で弦をおさえながら、針金でできたピックを右手人差し指につけて弦を弾く。下駒に日本の三味線のサワリにあたる「ジュワーリー」と呼ばれる部分があり、弦が接する面の微妙なカーブと共鳴弦とにより、独特の音色が生み出される。



シタールの製作過程の特徴

作業工程は大きく分けても十段階以上に分けられ、少なくとも木工、接着、彫刻、塗装、弦や音色の調整は完全な分業制である。楽器の最終的な仕上げを行う職人頭は時には棹の内部の刳り抜きから一人でやり直すこともあるという。



動画資料について

2004年9月、田中多佳子、塚原康子がインド マディヤプラデーシュ州ミラジュ市にて撮影したもの。協力:Bharatiya Tantu Vadya



シタールの製作過程動画一覧

胴の製作1 胴に使用されるふくべ(トゥンバ tumba )を畑で栽培する。
胴の製作2 ふくべは畑で、日当たりや方向を変えながら手をかけて形良く育てられる。
胴の製作3 畑で乾燥されたものを職人が購入し、さらに職人宅の屋根裏で乾燥させられる。ふくべの底部に書かれているのは胴周りがインチ数で示された個別のサイズ。
胴の製作4 サイズに応じてよく乾燥させたふくべを選び、頭頂部をのこぎりで切り取る。
胴の製作5 中の種などが取り除かれたふくべ。
棹の製作 棹は、木材を刳り抜き板で蓋をして内部に空洞を作る。
胴と棹の接続 胴の形を整えながら、木片を接着して棹と胴を固定する。
胴と棹の接続 ラーク(松やに?)でふくべと棹、その接続部の木部同志を固定する。
胴と棹の接続 棹と木の接続部、葉状の補強材、ふくべのつなぎ目にやすりをかける。
彫刻による装飾 接続部の葉状の木片に装飾的彫刻をほどこす。
セルロイド片による装飾1

棹の縁や胴の表面などに鹿の骨やセルロイドなどの薄片を貼り、細かい彫刻を施し、黒や赤の色を入れて模様を浮き上がらせる。

 

セルロイド片を型に当てて切り抜き、表面に接着する。

セルロイド片による装飾2

 

棹の縁のにセルロイド片を貼って彫刻し、彫刻した部分に色を入れる

彫刻による装飾 胴表面や接続部のいたるところに装飾をほどこす。
表面の塗装 全体にニスを塗る。
下駒の製作 下駄状の木片の上に板状の鹿の角などを接着して下駒を作る。板表面のカーブが直接音色を決定するデリケートな部分。
下駒の製作2 下駄状の木片の上に板状の鹿の角などを接着して下駒を作る。板表面のカーブが直接音色を決定するデリケートな部分。
糸巻きの製作 演奏弦用の糸巻きを木で作り、持ち手部分に刻みを入れる。持ち手部分にニスー塗り、切り取った不要のふくべに差し込んで乾かす。
弦の取り付け 棹の上端に糸巻きを差し込み、下端との間に弦を張りわたす。
全体の調整 音を鳴らしながら全体の調整を行う。時には胴を削るところからやり直す。